U2が以前に「A Sort of Homecoming」(故郷への帰還、の意)というタイトルを用いていなければ、スタジオアルバムとして通算10枚目の本作こそがそのタイトルにふさわしかったかもしれない。本作のサウンドは、さまざまな点でU2の過去のアルバムに似通っている。まるでバンドが過去に極めたさまざまな音楽的領域からポストカードを送り返しているかのようだ。幸福感に満ちたオープニング曲「Beautiful Day」では、エッジのトレードマークであるディレイを多用したギターワークが再び導入され、これは『The Unforgettable Fire』以来久々のことだ。このほかにも「Stuck in a Moment」では『Rattle and Hum』で見られたゴスペル色が再び姿をあらわし、「Elevation」のダンスビートには、1997年を代表するポピュラー音楽の収穫であるプロディジーの影響がうかがえる。これらどの曲をとっても、この驚くほど働き者のバンドがアイディア不足になる懸念はなさそうである。
スタジアム・ロックバンドによる90年代で最も奇抜で野心的なアルバム(傑作三部作『Achtung Baby』、『Zooropa』、『Pop』)を経た今でも、バンドは自分たちが常に全身全霊を傾けてきたものの本質を見極めようとしている。本作が証明するように、バンドの強みである叙事詩的な楽曲は健在で、同時にボノの書く詩では対象への親密度がより増している。「Walk On」と「Peace on Earth」は、ボノがこれまでに書いて歌った中でも最高の2曲である。本作はU2が成功を収めた今でも以前と変わらぬ衝動につき動かされていることを確信させてくれるものだ。
1. Beautiful Day |
2. Stuck in a Moment You Can't Get Out Of |
3. Elevation |
4. Walk On |
5. Kite |
6. In a Little While |
7. Wild Honey |
8. Peace on Earth |
9. When I Look at the World |
10. New York |
11. Grace |
サウンド的には昔のようなシンプルなものになったように聞こえるので「原点回帰?」という意見も多いのだが、そこはU2!ひと味違います。アルバムを通してロックっぽさを十分感じさせるという意味で★★★★
0 件のコメント:
コメントを投稿